人気ブログランキング |

最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

2008年 10月 09日 ( 1 )

陪審制か参審制か

 このところ、裁判員法にかかわる文献を読んでいますが、わが国で施行が予定されている「裁判員法」は、陪審制ではなく参審制であるとして、その特徴を国際的に比較し、これを「陪審制」に近づけようという観点から書かれた書物を読みました(丸田隆『裁判員制度』平凡社新書、2004年)。その中から、注目すべき指摘を挙げておきます。
 陪審制の典型はアメリカで、陪審員が裁判官から独立して裁判に関与するのに対して、参審制の典型はドイツで、裁判官と参審員とが協働して評議を行う制度です。日本にも戦前から「陪審制度」があり、戦後はその復活が予定されていたのですが、最高裁と司法官僚によって実現が阻まれ、職業裁判官だけの官僚裁判制度が今日まで維持されてきたのです。「陪審法」は廃止されたのではなく、一時停止されているに過ぎません。
 今回の「司法制度改革審議会」(1999年)に始まる論議では、13人の委員の中で、陪審制を支持する者は少数で、参審制を支持する者が多く、人選に問題がありました。肝心の最高裁も最初から陪審制には反対で、参審制でも3人の裁判官に2人の参審員(しかも評決権なし)という超保守的な主張をしていたのです。
 公聴会では、陪審制の導入を要望する意見が相次ぎましたが、審議会は陪審よりも参審に傾き、結局は、裁判官3人に裁判員6人という構成にまで修正された案が国会を通ったのです。政府自民党も、抜本的な改革を避け、現行制度の延長線上で考えるべきだとしたのです。
 著者は、これでは現在の刑事裁判の弊害は除去できないとし、3年後の見直しを踏まえて、これを限りなく陪審制に近づける努力をすべきだと結んでいます。
by nakayama_kenichi | 2008-10-09 16:12