最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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2007年 12月 02日 ( 1 )

吉川経夫先生の追悼原稿

 吉川経夫先生が、昨年8月31日に亡くなられたことについては、このブログでも取り上げました(82歳)。それが9月1日に亡くなられた佐伯千仭先生(98歳)の前日であったことも、悲しみを倍増するものでした。佐伯先生は、京大の刑法のはるか大先輩であるのに対して、吉川先生は少し上の信頼できる先輩として、長年お世話になった間柄です。
 私は、今、吉川先生を追悼する雑誌原稿として、とくに「刑法改正問題」に関する吉川先生の業績を検討し始めましたが、これは1956年から1980年頃までの長期間に及ぶもので、先生はその間に作成された「改正刑法準備草案」(1961年)にも「改正刑法草案」(1974年)にも、審議会の委員として立案過程に直接参加され、しかもその内容を可能な限り周囲に伝えて、批判的な運動を組織することに貢献されました。おそらく、刑法改正問題の全体的な経緯を最もよく知る貴重な学者であったといってよいでしょう。
 その業績は、幸いにも、吉川先生ご自身の手によって、『吉川経夫著作選集』(全5巻)のうち、第1巻と第3巻に収められていますので、まずはこれを改めて読むことにしました。まだ全部を読み終えてはいませんが、ここでは、その中からいくつかの感想を記しておきます。
 第1は、関連する論文はもちろんですが、講演・対談・座談会等まで丹念に収録されており、むしろその方に本音や裏話が出ているので、興味があるという点です。とくに、村井教授との対談には、準備草案に対する批判論がもっぱら平野博士と協力して展開されている経過が詳しく記述されている点が注目されます。
 第2は、1970年頃に平場・平野博士を中心として形成された批判的グループ(「刑法研究会」)内でも、平野博士自身は死刑廃止には反対で、保安処分制度も、医療的性格のもの(B案)としては認めるという態度をとっておられたという点です。吉川先生は、死刑廃止論を貫かれましたが、保安処分については、反対論に傾きつつ、結論は留保されたままに終わっているのが残念です。心神喪失者等医療観察法には触れられていないのです。
 この原稿は、12月末の締め切りまでには、仕上げなければなりません。
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by nakayama_kenichi | 2007-12-02 22:01