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[ 2007-11 -16 12:04 ]
2007年 11月 16日 ( 1 )
本書は、93歳の刑法の長老である団藤先生に、42歳の若い作曲家=指揮者が質問しながら、先生の本音を巧みに引き出し、これを「反骨の精神」としてまとめて見させたものです。団藤先生のきわめて率直なご意見とともに、法学を含む社会科学にも詳しい一家言をもった伊東乾氏の質問と鋭い問題意識にも驚かされました。
詳しい書評はさておいて、とりあえず以下では、とくに、死刑廃止論と裁判員制度に関する団藤先生のご発言の一端を紹介しておきます。
「最高裁判所判事といっても、人間は人間です。それが『あなたに死刑を宣告します』といえるかというと、これは絶対に言えない。人間は人間に『死になさい』とは言えない。その単純な事実に、自分が死刑宣告する立場に立って、はじめてはっきり気がついたのです」。
「死刑なしでもやっていた時代が、日本にも世界にもあったという事実をみんなきちんと認識してもらいたい。ところが今の日本では、たいていの刑法学者たちを筆頭に、死刑がとんでもないものだなんて頭が全然ないのですよ。もうそれはダメですね」。
「私は、裁判員制度は困ったものだと思っています」。
「この制度は、あくまで『官製』のものでしょ。司法の民主化、公開性、透明性を本当に言うのであれば、それは国民の中から、民衆の中から湧き上がってくる力でなければならない。それなら尊敬しますけどね。要するに法務省あたりで考えて、誰かが裁判員って名前を考えついて、そうしただけのことでしょう。だから僕は、この裁判員って、くだらないの一言に尽きるんです」。
その他、反骨のコツを示す証言が満載されており、絶対に一読の価値があります。