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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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裁判員法と冤罪の防止

 来年の5月に施行される予定の「裁判員法」については、一方では、新しい制度をスムーズに進めるための準備作業が進められていますが、他方では、依然として制度自体やその運用に対する疑問や批判が消えないまま、見切り発車になるおそれがあります。
 9月23日の朝日新聞によりますと、明白な冤罪事件であることが判明した「志布志事件」(鹿児島の選挙違反事件)では、判決は「客観的証拠はなく、自白は県警の強圧的誘導によるもの」として全員を無罪にしたのですが、それに加えて、取調べの際に、警部補が被告人に対して、親族の名前を書いた紙を踏まされる「踏み字」を強要したことが「特別公務員暴行陵虐罪」に当たるとした有罪判決も確定したことが報じられています。
 私が注目しましたのは、被害を受けた元被告人が、取材に対して、「裁判が終わり、ほっとしました。取調べを全面的に可視化していれば、警部補も踏み字などさせなかったはずです」と話したという部分です。ところが、警察庁は、「取調べ適正化方針」を作成するというのみで、取調べの「全面的な可視化」をかたくなに拒否し続けています。
 そして、このような状況は、裁判員裁判が始まっても、変わる保障はなく、代用監獄における密室での取調べがそのまま続くことになります。裁判員が公判に参加するだけでは、現状を追認する「お飾り」に終わる可能性が高く、むしろ裁判員法が冤罪の防止に役立つためには、現在の刑事裁判の実態を国民の目から見直し、変えていくことが必要です。取調べ過程の「全面的な可視化」(録音・録画)はその一つで、それは韓国を含む国際的な常識なのです。
 裁判員法は、「司法の民主化」(市民による司法のコントロール)を目指すべきだと思います。
by nakayama_kenichi | 2008-09-23 21:12