佐伯博士の刑法思想の評価
2008年 09月 04日
原稿の校正作業は、いよいよ公刊されるという緊張感を伴いながらも、執筆者としては自分の原稿を再確認するという仕事には心が弾むものです。今回も、すぐに着手して、3回分を全部、一気に見てしまいました。不満や後悔の残るところもありますが、印刷されてしまえば、大きな変更は不可能で、あきらめざるを得ません。
ただ、今回の原稿は、佐伯博士の戦前の「日本法理」にかかわる部分を主題にしていますので、これまでほとんど意識的に引用されてこなかった一種の「タブー」に正面から触れることになるという意味で、特別の緊張感を味わいました。本来はリベラルな佐伯先生が、なぜ「日本法理」を通じて、戦前の国家主義的で全体主義的な世界観と大東亜戦争に至る戦時体制を推進する方向に向かわれたのか、なぜ戦後の転換に際して「日本法理」への明確な反省が見られなかったのかという点が、依然「謎」として残されているのです。
ただし、この問題については、最近公刊された法律雑誌の佐伯博士追悼特集論文の中でも、何人かの刑事法学者によって部分的に触れられていますので、今や「タブー」ではなくなりつつありますが、どうしても避けては通れない問題として真剣に受け止め、そこから何を学ぶべきかという観点からの慎重な検討が必要であることを痛感しています。
論文の掲載が始まったら、また報告し、ご批判を受けたいと思います。

