8月末の夏季合宿
2008年 09月 02日
今年の日弁連合宿では、第1日目に、韓国の国際警察大学校の李教授による「韓国における刑事司法改革について―刑事手続改革と国民参与裁判」と題する講演が行われました。李教授は、日本留学の経験もあって、驚くほど流暢な日本語で講演された後、質疑応答にも誠実に対応され、その発言の内容は参加者を文字通り魅了する興味深いものでした。
この問題については、このブログでも少し紹介したことがありますが、韓国における刑事手続の改革(刑訴法の改正)と国民参与裁判(陪審制度の導入)とが連動していること、とくに刑訴法の改正では、被告人の防御権の拡大が取調べの適性化(身柄不拘束の原則、取調べの全過程の映像録音、取調べへの弁護人の立会い権など)が主題となり、それを前提として裁判員裁判(選択制)が実現された点に最大の特徴点を見ることができます。そのような司法改革の原動力がどこにあったのかというのが、われわれの学ぶべき視点だと痛感しました。
これに対して、わが国の場合には、裁判員裁判の円滑な実施に向けたPRが目立つだけで、刑事手続、とくに被告人の防御権にかかわる捜査段階の取調べの改革はほとんどそのままで、選択制も認めない「裁判員参加」のみに限定され、むしろ被告人の弁護権が危ないという危機感が顕在化しました。来年5月の施行までになすべき点は、なお多く残されています。