パチスロ機のメダル
2008年 08月 06日
パチンコの時代には、磁石を用いて不正にパチンコ玉を誘導して取得したという古典的な判例がありましたが、最近では、「体感器」と称する電子機器によってパチスロ機の抽選周期を検知してこれに同調させることによって、大当たりを発生させるという方法が開発され、その方法も直接パチスロ機に作用しない間接的なものも現われ、その限界が微妙になりつつあります。
体感器の機能と作用が具体的に明らかにされれば、その作用によって獲得したメダルの枚数が窃盗の被害ということになるのですが、最初に購入したメダルや通常の方法で得られたメダルも混和しているときは、メダルの被害枚数を確定することは困難になります。
そこで、最高裁は、パチスロ機の乱数周期と同期させる機能を有する「体感器」を身体に装着してパチスロ機で遊技する行為自体が窃盗罪に当たるとし、それがパチスロ機に直接影響を与えなくても、さらにメダルが体感器の操作の結果取得されたものでなくても、そのすべてについて窃盗罪が成立すると判示したのです(最決平19・4・13)。
しかし、これでは、体感器を装着してパチスロ遊技を開始すれば直ちに窃盗となり、取得したメダルが全部損害となりますので、一見問題が解決したように見えますが、体感器の具体的な作用も効果も棚上げにして「窃盗罪」になるという論理には、原則的な疑問があります。

