2度目の文楽
2008年 04月 25日
演目の第1は、「競(はでくらべ)伊勢物語」で、「玉水渕の段」では、皇位継承争いを背景として、娘信夫が夫豆四郎のために、饒八が川の中から拾い出した三種の神器のひとつを奪った際に着物の袖を引きちぎられという経緯が演出されました。若い2人の人形の明るい表情からは、後の悲劇は全く予測されませんでした。
ところが、「春日村の段」では、娘信夫の母である老婆小よしのもとに、かつて隣人であり今は貴族となっている紀有常が訪れ、本当は自分の娘である信夫を井筒姫の身代わりとして、しかも悲惨なことに夫の豆四郎ととに首を打ち、その首を三種の神器の一つとともにお上に献上するという真意を老婆小よしには告げないままに、盾で隠し、娘の最後の琴の演奏を待って刀を下ろすという悲惨な場面が繰り広げられました。
人形とはいえ、自殺や殺人の場面には、目を覆いたくなるような現実感がありましたが、それ以上に、そのような悲惨な行為に有常を追いやったものが、実は皇位継承にからむ「忠義」という絶対的価値であったということを改めて思い知らされました。
演目の第2は、「勧進帳」で、兄頼朝に負われる身となった義経が、家来とともに安宅の関を越える際に、主君の危機に智略と勇気を振り絞って立ち向かう弁慶の縦横無人の立ち居振る舞いが圧巻でした。人形と人形師と語り手とが融合し一体となった伝統的な芸術の魅力に取り付かれ、今から次回の公演を楽しみにしています。

