日野原重明氏の「生き方」
2008年 03月 18日
高齢者向けということでしょうか、大きな字でやさしく書かれていますので、一気に読んでしまうことができますが、内容は、著者の体験から生まれた身近な「生き方」について、高齢者だけでなく若者に対しても、率直に訴えかけるもので、その「気力」に圧倒されてしまいます。
目のうろこが落ちて、共感を覚える記述が満載されていて、とても紹介しきれないのですが、ここでは、子どもたちへの教育がひたすら「教え込む」ことよりも、むしろ「子どもが自分でわかるのに手を貸す」というスタンスに変えるべきだといわれている点のほか、とくに戦争の歴史を語り継ぐことの必要性について書かれた部分を以下に引用しておきます。
「戦争体験を「過去」の一事件として語っていてはだめです。それでは伝わらないのです。戦争があり、どん底の戦後を生き抜いて、その末にいまの自分があるという、連綿と息づく文脈のなかで語らなければ意味がありません。戦争は二度とあってはならない。けれど、あのまちがいをも含めて私たち老人は多くを学んだはずです。天と地ほどの差のある、戦後間もなくの生活といまの生活を実感として比較することも、私たちにはできます。それは生きる知恵です。物質的な豊かさを追い求めるうちに、何がいいことで何が悪いことかの判断さえなくしているようないまの世に警鐘を鳴らすことができるのは、私たち老人しかいない。いまなら、まだ間に合います」。