死刑廃止論を読む
2008年 02月 23日
私は、この本を丁寧に読み進みながら、ある種の感動を覚えました。著者には、日本と日本人に対する暖かいシンパシーがあり、居丈高にならずに、平静にそして平易な文章で、的確に問題点を指摘し、押し付けではなく、いつの間にか興味をもって死刑の問題を考えさせるという不思議な魅力があるのです。
私は、いつでも参照できるように、20箇所以上、赤ペンを使い、付箋をつけて、読み終わりましたが、その中でもとくに印象に残った点を書きとめておきたいと思います。
第1は、日本の死刑制度を考えるために必要な知識を「事実」として明らかにするために、秘密として一般には見られない死刑執行場(絞首台)の図面まで公表されていること、そして、面会を依頼された死刑囚と心を通わす中で結局死刑が執行されてしまうという体験談にも心を動かされるものがあります。
第2は、日本の死刑執行が恣意的に行われ、法務大臣が「慎重に検討して判断した」というのみで、法律の規定が無視され、秘密裡に死刑が執行されていることを、国家の側のうしろめたさを示すものとして、強く批判し続けられている点です。
第3は、日本でも死刑を廃止する時期が必ず来るが、さし当りは死刑の執行を停止することを真剣に考えるべきで、そのリーダーシップを取るには「決断力」が不可欠であるとし、それによって日本は生命を尊重する国として国際的にも見直されるだろうとの希望と確信を披瀝されている点です。
本書を読んで、日本の死刑を考える人が増えることを期待したいものです。

