警察庁の有識者懇談会
2007年 12月 09日
これは、鹿児島県議選の買収事件や富山県氷見市のl婦女暴行事件にからむ冤罪(えんざい)事件で無罪判決が相次いだことなどを受けたものですが、警察庁としては、すでに適切な取調べを行うための「指針」を庁内で作成中なので、有識者懇談会を設置して、国民の声を反映させるのが趣旨だとされているのです。
しかし、実際に有識者として委嘱された委員の顔ぶれを見ますと、刑訴法の専門でない学者やプロデユーサーのほか、弁護士としても、被害者の会の代表幹事や元検察官という立場の委員が目立ち、反対に取り調べの対象となる被疑者や被告人の立場を代弁する側の人が1人も入っていないことが、最初からこの懇談会の性格と限界を示しているといってよいでしょう。その結論が、おそらくは、警察庁の「指針」に基本的に沿った内容になるであろうことが十分に予測されます。
ただし、取調べの模様を録音・録画する「可視化」についても意見交換されるともいわれていますので、全面的な可視化が「取調べの機能を阻害すので、到底あり得ない」としてきた警察庁の固い態度に何らかの変化を迫るような意見が出るのかどうかが注目されるところです。
この問題については、民主党がすでに「可視化」を含む改正案を提出しているほか、国連拷問禁止委員会も2007年5月の勧告で、「締約国は、警察での勾留あるいは代用監獄での取調べが、全てにおいてビデオテープなどの電子的な録音や、尋問中の弁護人の立会いや接見などにより体系的に監視され、録音記録は刑事裁判において使用可能であることを保障しなければならない」と結論づけていることも十分に参照されるべきでしょう。