戸別訪問罪の事件
2007年 09月 26日
私は、この事件に関する意見書を書いて、その内容を「判例時報」誌に公表しましたが、国民救援会の方から受けたインタビューを「救援情報」誌に載せましたところ、飯能市にお住まいの元裁判官の方から電話と手紙が舞い込みました。実は、この方が若い裁判官の時代(昭和43年)に、和歌山の妙寺簡易裁判所で、公選法上の戸別訪問罪の規定が違憲であるとして無罪判決を書いたその人だったのです。早速、私の『選挙犯罪の諸問題』(昭60)を参照しましたところ、その判決が見つかりました。その判旨は、以下のように格調高いものでした。
「言論の自由は明白かつ現在の危険の存する場合に限り制限され得る。戸別訪問は最も基礎的な選挙運動の手段として、財力の多寡を問わず平等に与えられるもので、特別の保障に値する。それは、買収などの不正行為と性質上の因果関係がなく、全面的に禁止することは許されない」。
この方は、裁判官時代から15年以上にわたって、「司法反動を憂うる同期の法律家有志の会」を毎年開いておられるほか、地域では「政党助成金違憲訴訟」にも取り組まれるなど、その初志が決して忘れられていないことを知って、敬服した次第です。この方とともに、とくに若い裁判官の独立心とリベラルな人権感覚に期待したいものです。