条例違反の盗撮行為
2007年 07月 09日
それは、盗撮行為として、文句なしに有罪になりそうに思えるのですが、厳密には、撮影したのではなく、撮影しようとした(被害者は知らずに現場を去り、カメラには何も写っていなかった)という点に問題があります。検察官も、直接「盗撮行為」の規定ではなく、その他の「卑わいな言動」に当たると解しました。これはいわば盗撮行為の未遂に当たる行為ですが、未遂を処罰する規定がありませんので、一般的な「卑わいな言動」の中に含めて処罰することができるかという点が問われているのです。
私は現在、この問題を検討するために、「迷惑防止条例」に関する文献を集めて勉強をはじめていますが、この条例は、昭和30年代の後半に、東京オリンピックのための治安対策として、いわゆる「ぐれん隊条例」が東京に出来た後、ほとんど各府県で制定されたものです。これらの条例の違反には罰則がついていますので、刑法学者も当然関心を示すべきであったはずですが、ここでも特筆されるのは、佐伯千仭先生が、いちはやく「迷惑防止条例」(立命館法学53号、昭39)という論文を書かれており、軽犯罪法との関係などを含めて、多角的に丹念な検討を加えておられたという歴史的事実です。
ここでは、佐伯先生が、わいせつに至らない「卑わいな言動」も処罰しようとすれば、単に卑わいな「言葉」だけでも処罰されるおそれがあると警告されていたこと、真の暴力対策は、政治家や財界の有力者がこれを陰に容認助長することをやめ、たとえば脱税の面からの取締は百千の表見的迷惑行為の取締より、その根源をつくのに遥かに有力であろうと指摘されていたことをあげておきます。この事件の帰趨については、また触れることにします。