滝川事件の後遺症
2007年 04月 09日
私自身の関心としては、滝川事件以後の戦後当初の京大法学部再建問題のなかで、とくに刑法の佐伯教授の教職追放の経過がなかり詳しく叙述されているところに興味を引かれました。教授の教職追放は、GHQの方針にもとづく教職・公職追放の一環として、京大法学部内に設けられた教員資格審査委員会が決定したものですが、著者はその結論に次のような疑問を呈しています。「たしかに佐伯は『大東亜戦争に相応する雄大な日本法学の建設』をうたい、『刑法における日本的なるものの自覚』および『刑事法より見たる日本的伝統』を執筆しており、国家主義的傾向は強いが『超』とまで行くか疑問である」というものです。なお、当の佐伯教授も当時「判定理由書」に長文の反駁文を書かれていたことも明らかになっています。
佐伯博士は最近亡くなられましたが、戦前の業績についても、とくに上記のような評価に関連した歴史的な検討が必要であると考え、少しづつ読みはじめているところです。
なお、著者が、本書の「あとがき」のところで、現在の大学の自治と学問の自由は、独立行政法人への交付金の配分が設定目標の達成度に反映するというやりかたで、「金力」を使っての介入という形で行われているのではないかと指摘してことにも注目する必要があるでしょう。

