立川ビラまき事件の論争
2007年 04月 05日
この事件と類似するビラまき事件が、最近になっていくつも問題になるようになってきましたが、そこには一般の商業ビラではなく、とくに政治的な表現の自由にかかわる文書の配布を意識的に問題にし、刑事責任をも問おうとする当局の姿勢が明瞭に現れてきていると思われます。
この種の事件に関する裁判所の判断は分かれていますが、刑法および憲法の学説は、これまで有罪とした判例にはほとんど批判的でリベラルな対応を示してきたといってよいでしょう。それは、個人の住居のプライバシーを侵害したり、住民の積極的な拒絶意思に反しない限り、情報を「伝える」という表現の自由を尊重するのが自由で民主的な社会のルールではないかという立場だということができます。
雑誌『研修』701号に、曽根威彦教授が寄稿された「ポスティングと刑事制裁」という論文は、まさに以上のようなアプローチから書かれたものでしたが、最近の同誌705号には、友添太郎氏(法務総合研究所教官)による「ビラの配布と住居侵入罪」という論文が掲載され、それは上記の曽根論文を基本的に批判し、有罪とした控訴審判決に賛成するという趣旨のものです。
私自身も、両者の比較検討をしなければと考えていますが、まずは当事者の曽根教授に反論を書いてもらったうえで、これを継続的な論争問題として広げていく必要性があることを痛感しています。