映画「それでもボクはやってない」
2007年 01月 14日
満員電車で痴漢に間違えられて、逮捕され、留置場に勾留され、検事の取り調べでも無実の主張は認められず、起訴されて、公判に付され、ようやく有利な目撃者があらわれて、無実になるかなと思わせる場面もあり、会場は最後の判決宣告の瞬間までまさに固唾を呑むという緊張した雰囲気に包まれました。そして観客は、知らず知らずのうちに、日本の「刑事裁判」に潜む問題の深刻な奥深さを、迫真的な映像を通じて改めて思い知らされることになったのです。
周防監督は、試写会後のパネル・ディスカッションンでも、この映画を作った意図を明快に語っておられましたが、その趣旨をご自身のコメントから以下に引用しておくことにします。
「・・・・疑わしきは罰せずという言葉を聞いたことがあると思います。犯人であるという確かな証拠がない限り、無罪であるということです。ところが現実には、疑わしきは罰せよ、としか思っていないような判決があることを知りました。しかし、それはもしかすると、今現実に日本に生きている多くの人たちの気持ちの反映かもしれません。多くの人にとっては『疑わしきは罰せず』よりも『疑わしきは捕まえといて』の方が本音に近いもかもしれません。しかし、疑われるのが自分自身だったらどうでしょう。『十人の真犯人を逃がすとも一人の無辜(むこ)を罰するなかれ』 人が人を裁いてきた歴史の中から生まれた法格言です。この刑事裁判の原則について今一度考えてみたい。そう思ってこの映画を作りましした」。
この映画は、1月20日から全国の東宝系ロードショーで公開されますので、一般市民の「刑事裁判」に対する関心を一挙に高めることになると思いますが、法律家を目指すロースクールの院生はもちろんのこと、心ある裁判官や警察官・検察官にも是非みてほしいものです。

