自分の本を読む
2006年 11月 22日
ところで、私が学生用に書いた刑法の教科書も数冊あるのですが、自分で講義をしなくなってからも、とくに「口述刑法総論」と「口述刑法各論」は、いまでも法学部や法科大学院の学生に読まれていますので、少なくともこれらは、毎年今頃になると、出版社・成文堂からの要請もあって、読み返して内容を確かめるという作業をすることが慣例となっています。
とくに最近は、立法の動きが刑法典にも及び、新しい判例も出てきていますので、最低限度これらの新しい動向をフォローしておく必要があります。これは、いったん止めたら、もう続かなくなるという意味でも、基本的に重要な仕事であります。
これまでの改訂や補訂の際の新版と旧版とを比較しますと、実におびただしい付箋がついているのが目につくのですが、それは、いかに手を入れても表現や言葉の印刷にミスがあり得るのかということに驚かされることを意味しています。しかし、そこにまた「校正」の面白さがあるともいえるでしょう。
読者からは、古い「刑法総論」「刑法各論」についても、なお改訂の要望が出ていることは承知していますが、率直にいってそれはきわめて困難であると言わざるを得ません。せめて、「概説刑法総論」「概説刑法各論」については、現状に対応するための最小限度の改訂は、考慮していることを申し上げておきたいと思います。

