財産罪と罰金
2006年 10月 18日
「法定刑において財産刑に適合的でふさわしい犯罪行為類型としてどのようなものがあるかについては、・・・・・現時点ではなお厳しい制約が存在することは否定できまい。中心的刑罰はなお懲役といった作業つきの自由刑であり、現行法において多くの犯罪種から罰金は排除されている。しかし、このような現状に何らかの理論的な必然性があるわけではない。むしろあらゆる犯罪が財産罪にも適合的であるといえるのではないか。・・・・・・経験的データで必ずしも実証されているわけではない威嚇・抑止への信仰が財産刑の選択を阻んでいるにすぎないのではなかろうか。・・・・・窃盗を中心にした財産犯に対しても死刑を用いた時代を脱して、死刑自体を克服しつつある展開は、やがて施設拘禁としての自由刑から、財産刑へとバトンタッチを現実的なものとしていくであろう」。
「万引犯人の多くが微罪処分ですまされていることには、伝統的な窃盗罪における被害対象としての財物について反省を迫るものがある。・・・・・・低価格商品の万引のようなものが、10年以下の懲役にあたる窃盗罪にふさわしいかが問題になりえたのである。このようなものは、可罰的違法論性論から、違法性が小さいとして非犯罪化の対象にすることが考えられる。・・・・・窃盗行為の類型化に応じた、非犯罪化から、微罪処分、起訴猶予処分、今後の罰金を含めて、執行猶予と実刑刑期の区分などを、客観的な犯行内容によるものとして明確化し、時には構成要件の細分化も考えるべきだと思われる」。
以上のような意見には、私も基本的に賛成でありますが、窃盗罪に罰金刑を新設した今回の立法提案の審議の際には、刑法学会内部にこのような専門家の意見があることすら全く紹介されることなく、ほとんど無視されてしまっているのはなぜかという問題を提起しておきたいのです。

