臓器移植の根本理念
2006年 10月 09日
この問題は、愛媛県の宇和島徳洲会病院でなされた腎臓移植手術の際に表面化したもので、すでに専門家によるいくつかのコメントも出ていましが、私がとくに注目したいのは、これまで600件以上もの豊富な腎臓移植の経験のあるベテランの移植医が、「臓器売買知るはずがない、お礼さえ違法おかしい」と語ったとされる発言の内容についてです(朝日新聞10月7日)。
この医師は、一方では、臓器移植は「売買はだめ」という前提から成り立っているからそんな患者は来ないといいながら、他方では、結果としてだまされたが依頼者を恨んでもいないといい、米国では国をあげて移植を進めているのに、日本ではお礼さえ違法とされ、ドナー不足という現実を臓器移植法がさらに締め付けているといい、さらに、ほかに助ける方法がないなら(売買と)知っていても手術するかもしれず、法律があるからといって黙って死ぬのを見ているわけにはいかないとさえ言っているのです。
このような発言は、一見リベラルな発想のように見えますが、生体移植の対象を親族に限定した移植学会の指針に違反し、臓器売買を禁止する現行法にも疑問を呈する点で、法的な責任を問われること以上に、何よりも「臓器無償提供の原則」という臓器移植の根本理念に立ち返った自覚と反省を迫るものであることを強調しておかなければなりません。これが移植医の「本音」ではないのかといわれないことを願っています。

