中義勝先生の講義の録音
2006年 07月 06日
最近、中先生のお弟子さんであった川口浩一氏(姫路独協大学教授)を通じて、かつて中先生が関西大学で刑法の講義をされたときの録音テープを編集したCDを入手することができましたので、早速、いささか緊張しながら、聴取しました。
いつ頃の講義か分かりませんが、独特のやわらかく包み込むような張りのある中先生のお声が身近に再現されることによって、先生の颯爽とした講義姿を彷彿として思い浮かべることができ、しばし感慨にふけりました。
講義のテーマは「行為論」で、因果的行為論や目的的行為論の説明がなされていますが、いずれも「不作為の行為性」を説明できない点に問題があるので、結局、行為概念としては「人の身体の動静」(佐伯)につきるというほかはないという趣旨の説明がなされています。
その趣旨は、先生の教科書(講述・犯罪総論、1980年)にも書かれていますが、講義では、実例をあげて、実に丁寧に、言葉の意味を明らかにしつつ、論理によって学生を説得するという手法が徹底してとられています。
中先生ご自身の学説にも変化が見られましたが、この当時から、佐伯説と平野説との関係が意識的に取り上げられ、私の見解にも言及して頂いていたことに、あらためて敬意を表したいと思います。もう一度、あの頃の論争問題を再現して、中先生から受けたご高恩に報いたいという気持ちになりました。