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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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マッカーサーと天皇の関係(2)

 では、マッカーサーはなぜ天皇の戦争責任を追及しようとしなかったのだろうかか。ダワー『敗北を抱きしめて』の下巻には、その理由と経緯が詳細に展開されている。それは、マッカーサー総司令部の「くさびを打ち込む」という対日占領政策に由来するものだったというのである。
 「すでに戦争の後半には、マッカーサー司令部も、天皇が日本の降伏だけでなく戦後の変革の鍵を握っていると考えられていた。部下たちの表現によれば「軍国主義者のギャングたち」は日本をだましただけでなく、聖なる君主も裏切ったのだと日本人を説得し、それによって軍部と天皇(およびその臣民)との間に「くさびを打ち込む」ことが重要なのであった」(下巻8-9頁)。
 「天皇の敗戦の放送は、事実上、宮廷と政府が派手に振り付けした「国体護持」戦略の始動を告げる合図であった。放送から7時間後、鈴木貫太郎首相はラジオ演説で、「陛下は万民を救いかつ世界人類の幸福と平和に貢献すべき旨のご聖断をし給うたのであります・・・・」と国民に告げた。この老いた退役海軍大将は続けて、勝利を得られなかったことについて国民はことごとく陛下に「心よりお詫び申し上げる」といい、「臣下の本分は、生きるにつけ死ぬにつけ、如何なる場合にも天壌無窮の皇運を扶翼し奉ることであります」と宣言した」(下巻16頁)。
 「天皇を救い、利用することに対する総司令部の関与は、確固としたものであった。その焦眉の急は、もっとも利用価値の高い天皇を作り出すことであった。・・・・・・その後の数カ月間、日本の皇室擁護派とアメリカ人の同調者たちは、天皇を守り、利用するにはどうすのが一番よいかをめぐって、ぎこちないダンスを一緒に踊った。・・・・・天皇に新しい衣装を着せ、裕仁個人の身の安全を確保し、新設された民主主義国家の中央装飾として玉座を置くのに、大いに貢献したのである」(下巻32-36頁)。
 そのほか、まだまだ多くの記述があるが、マッカーサーの政策的意図はそれなりに了解できるとしても、天皇裕仁の対応には本質的な問題があり、そこには最高の特権者によるしたたかな自己保身の究極の姿を見る思いがするのである。
by nakayama_kenichi | 2006-02-28 10:55