ベーリングの構成要件論
2006年 02月 18日
ところが、最近、ある読者から、ベーリングの晩年の「指導形象」論について、それが上述の構成要件論の変遷とどのような関係にあるのかという質問が寄せられた。これは、専門家の間でも、むずかしい問題とされてきたものである。
評価はほぼ2つに分かれるが、1つは、ベーリングが晩年には初期の「形式説」を変更ないし緩和して、「違法・有責類型説」に接近したことを意味するというものであり、もう1つは、形式説を維持しつつ、構成要件が違法・責任の実質を貫く「形象」であることを強調したものと評価するものである。私は、佐伯説にしたがって、後者のような評価に組するが、それが学説として一般化しているとは必ずしもいえないところに、問題を残している。
ドイツの学説史とその思想的な変遷をたどる好個の問題のひとつとして、この問題の解明はいまだ終わっておらず、なお今後の継続的な検討が期待されているといえよう。
それにしても、読者からの質問によって、古い問題が掘り起こされるというのは、専門家の反省を迫るものとして、その意義は大きいことを感じた次第である。質問者に、この場を借りて、感謝したい。