「堀越事件」の証言
2006年 01月 21日
私は、この事件に関して、昨年始めに弁護団から依頼を受け、すでに5月段階で「公務員の政治活動に対する罰則の適用について」と題する「意見書」を作成し、そこでは人事院規則14-7の問題点と本罪の保護法益論を中心的に論じた。しかし、その後の検討から、新たに本件に特有の問題として、政党機関紙の郵便受けへの「投函行為」時には相手方が不在であり、行為の「外形」から見てもそれが「公務員の政治活動」であることは一般に認知できないような場合にも、「公務の中立性に対する国民の信頼」を動揺させるおそれがあるのか(本罪の「法益侵害」があるのか)、また勤務場所の外で、勤務時間外に、職務を離れた一人の「市民」として政党機関紙を配布するという行為まで一律に処罰することは、さきの「公務の中立性に対する国民の信頼」の動揺という観点からも、疑問でないかという趣旨の「意見書(その2)」を今年の1月に急いで作成し提出していたので、当日は、これらの意見書の趣旨を改めで口頭で説明し敷衍するという方法をとった。
この事件の審理に当たっては、憲法(3人)、アメリカ法、刑法、刑訴法、国際法の7人の学者証言のほかにも、全部で13人の専門家の意見書の提出が予定されている点でも異例であるが、しかもそれらのすべてが現行の立法とその解釈・適用に基本的な見直しを求めるものであって、逆に国公法による本件の処罰を肯定する趣旨の証言や意見書はひとつも提出されていないという点でも、きわめて異例であることに注目しなければならない。
裁判所の勇気のある決断を望みたいところである。
なお、私の「意見書」の内容は近く公表する予定である。

