立川ビラまき事件の有罪判決
2005年 12月 17日
この点で、1審判決が「ビラの配布は憲法の保障する政治的表現活動のひとつとして、商業ビラより優越的な地位を有する」と指摘したのは「表現の自由」を擁護する観点からは正論というべきものであったが、「共用」部分も「住居」にあたるとして構成要件該当性を認めてしまったために、「可罰的違法性」(刑罰を科すほどの違法性)がないというのが無罪の理由とされていた。
控訴審判決は、この点を捉えて、管理権者の意思に反する立ち入りは相当性の範囲を逸脱し被害も軽微ではないとして、違法性は阻却されないとしたのである。そしてその背後には、表現の自由のためであっても他人の権利を侵害してよいといえないという「相対的な」憲法論が予定されている。
この両判決については、本格的な批判的検討が必要であるが、控訴審判決が「共用」部分を住居ではなく「他人の看守する邸宅」に当たると解していることに注目すべきであり、そこからは、居住者のプライバシーではなく、「管理権者の意思」を制約する根拠や要件を検討する方向が目指されるべきであろう。また、「可罰的違法性」を構成要件該当性から分断する論理にも反省が必要である。