「法科大学院出でて研究会亡ぶ」
2005年 11月 15日
私自身は、もう定年後の身なので、幸いにも直接の影響を免れており、現役の法科大学院の教授の方々に同情申し上げるほかないのですが、それにしても、現状があまりにひどいことに驚きの念を禁じ得ません。法科大学院の教員には恒常的に「研究の時間がない。研究の時間が与えられない」というのは、何としても通常の理解を超えた異常な現象であり、しかもこの状態に改善の見込みがないというのでは、個々の研究者の悲劇というにとどまらず、わが国の法学研究全体に深刻な危機をもたらすおそれがあります。
私の周りの現役教授に声をかけても、法科大学院が忙しくてという挨拶がまず返ってきて、その忙しさの内容を具体的に聞いていますと、研究上の話題をしたり研究会への出席を誘ったりすることに気がひける思いをすることも稀ではありません。長らく研究会の常連であったある教授も、法科大学院に関係するようになってからはほとんど出席されなくなりました。今や研究会は、若い院生を除けば現役の教授の出席がとみに少なくなり、「法科大学院出でて研究会亡ぶ」という事態が進行しつつあります。
法科大学院の教授にも研究の時間を与えて本来の「研究者」になってもらわないと、法科大学院自体の将来も危なくなるでしょう。米倉教授の「続編」を楽しみにしつつ、法科大学院の内部から「改革の声」が湧き上がることを期待したいものです。