日本学術会議の「改革」
2005年 10月 21日
たしかに、従来の学術会議には「長老の名誉機関」「学会重鎮の社交場」などと言われる側面があり、改革の必要性があることは認めらる。しかし、平成16年の法改正がどのような経過で行われたのかという肝心のところがはきりしない。学術会議の内外で学会規模の論議が行われた形跡もないようだ。
最大の問題は、会員の選抜方法であり、これまでは学術研究団体を基礎とした推薦制であったものが、日本学術会議が会員候補者を選考するという方法に変更されたのである。これは、個別の学術研究団体の利害にとらわれない政策提言のためといわれているが、実際には学会からの推薦という原則が崩れて、候補者推薦会議の「選考」に基づく上からの任命という性格が強くなった。「迅速な意思決定が出来るように改革された」と評価する声(棚橋科学技術担当相)がある一方で、「会員の総意をどこまで代表できるか」との懸念もあるといわれる。
そこで、「日本学術会議法」を検索したところ、第4章の「会員の推薦」のところでは、17条が「日本学術会議は、規則の定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府の定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」と定めている。規則とその運用の実態は分からないが、新会員の名簿は公表されているので、どのような基準で選ばれたのか推測するほかはない。「若手の提言力」に期待する前に、人選のあり方にも注目すべきだと思われる。