手書きの手紙
2005年 10月 18日
最近は、ワープロやパソコンを使った横書きの規格化した文書が個人間の意思疎通手段である手紙の分野にも及び、さらに文書によらない「メール」による直裁な手法がますます広く用いられるようになってきています。私自身も、遅まきながらこの手法にしたがうようになり、いつの間にかそれが当然のことであるとして、気にもとめない状態になっています。
しかし、いま現にかつての「手書きの手紙」を手にとって見ますと、そのソフトで豊かな味わいと雰囲気に圧倒されてしまいそうな新鮮な驚きを感じます。考えれば当たり前のことですが、そこには、書いた人の個性と特有の文体が正直に表現されていて、それは一見して誰から手紙かか判別できるのです。そのような手紙を受け取った人は、その文体から容易に書き手の姿と心を読み取ることができるでしょう。
いったん機械化と電子化の方向が進みますと、その利便さに慣れてしまい、もはやかつての「手書き」時代に逆戻りすることはできないでしょうが、しかし「手書き」の手段は決して消えたわけではなく、その良さと雰囲気を忘れないためにも、いまでもこの手法を親密な意思疎通手段として利用する機会を残しておくことが賢明な防衛策ではないかと思われます。それはまた、漢字の書き方を忘れないためにも、むしろ必要であるともいえるでしょう。
偶然に発見した封書の束の差出人に、「手書きの手紙」を書いてみることで、これらの方々にも「手書きの手紙」の良さをアピールしてみたいと考えています。