共犯者の自白の信用性
2005年 10月 17日
それが「虚偽の自白」だとされたのは、その内容に合理的な疑いが残るという理由からですが、問題はなぜ共犯者がそんな虚偽の自白をしたのかという点にあります。判決は、共犯者には虚偽の自白をする特別の動機はないとしつつ、捜査官の側にも虚偽の事実を述べてまで供述させる利点はなかったとしています。しかしそれでは、共犯者が虚偽の自白に至ったことに何の理由もないということになってしまいます。
ここで重要なのは、虚偽の自白をしたとされる共犯者自身が、公判廷で、それは刑事さんから目撃証人がいると聞かされたのでそう思ったのですという供述を繰り返し述べているという事実であります。しかも、この点については、検察官の方から、それは思い違いではないかと執拗に追及されたにもかかわらず、最後まで変わらなかったのです。
これは、捜査官による誘導によって虚偽の自白がなされたことを強く示唆するものであるはずですが、裁判所はそれでもなお、そのような危険な取調べをするに匹敵する利点が捜査官にあったとも考えられないとし、上述のような共犯者の公判供述もそれ自体あいまいで不合理な点を含んでいるとして、その供述が信用できないとしたのです。
しかし、そうだとしますと、なぜ共犯者がそのような虚偽の自白をしたのかを説明できないという迷路に陥ることになり、そこに判決の最大のジレンマがあります。しかも判決は、その信用できない共犯者の自白のうち、後者の「共謀の自白」の方は信用できるというのです。この点は、また次の機会に触れます。