言葉による「セクハラ」とその限界
2005年 10月 16日
そこで、実際の裁判例を見ますと、その圧倒的多数は、具体的・直接的な行動によるものであり、たとえば、腰や肩に手を回す、お尻に触る、無理やりにキスをするなど、強制わいせつや暴行などに類するような「行動」であることが分かります。
ただし、少数ですが、性的な「言葉」による「セクハラ」を認めた判例もあり、たとえば、職場の上司が女性事務員に「~ちゃんは処女か」といい、「ホテルに行っても暗いからわからへん」等と性的関係を求める発言をした事例や、上司が部下の女性に関して、他の職員と「怪しい仲にある」等の噂を流して転職を勧めたという事例などがあります。
しかし、言葉による「セクハラ」が、「性的なジョーク、猥談、容姿や服装についての発言」にまで広がりますと、女性が不快に感じるものはすべて「セクハラ」に当たるというように、無限定に拡張されるおそれがあります。
そこで、これを限定するためには、個々人の良識やモラルの問題にとどまるものと、法的な救済を必要とする違法なものとを区別する必要があります。とくに、懲戒責任や損害賠償責任を問われるべき程度の具体的な「被害」、とくに職場秩序や人格の侵害が必要だと思われます。
とくに「言葉」の場合には、性的な関心・要求の強さと執拗さ、上司としての地位利用といった点から「悪質」と見られるケースに限定されるというべきでしょう。