雑誌「世界」の原稿(共謀罪)
2005年 10月 08日
私は、9月2日の京都新聞に短文を載せたが、その後、雑誌「世界」の編集部から原稿の依頼があり、これを引き受けたものの、体調のこともあって、なかなか執筆が進まなかった。しかし、法案を取り巻く上のような状況の変化もあり、力を集中することによって、今日(9日)ようやくまとめあげて、編集部に原稿を送信し、この仕事は一応の落着を見た。
書きたいことは一杯あったが、私はこの機会に、法案をめぐるこれまでの論議として、法制審議会での質疑と、前国会の衆議院法務委員会での質疑の内容とその特色を、比較しながら分析して見たかった。そこには、共謀罪法案に対する基本的な姿勢、もっといえば「思想」の違いが存在すると感じたからである。前者は、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処策として条約を評価し、その国内法化を広く容認しようとするものであるのに対して、後者には、国際協力の必要性を認めつつも、共謀罪の広汎な処罰が市民の権利と自由を脅かすのではないかと懸念し、その「限定化」を図ろうとする姿勢が見られるのである。
それにしても、法制審議会刑事法部会の結論が、13:1で法案(要綱)に賛成するものであったことは、この審議会がいかに少数意見を反映しにくい構造になっているかを物語っている。しかも、反対の1票は弁護士のようであり、学者委員は全員が賛成しているという事実は、刑法学会の会員全体の意見分布という点からもいささか偏っていないであろうか。