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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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雑誌「世界」の原稿(共謀罪)

 いわゆる「共謀罪」の広汎な処罰を含む法案が、10月4日に国会に上程された。これで3回目であるが、選挙で野党が大幅に議席を減らしたので、一挙に成立してしまうおそれが懸念される。しかし、この問題については、与党議員の間にも「修正案」を協議する動きが報じられており、審議の行方は予断を許さない。
 私は、9月2日の京都新聞に短文を載せたが、その後、雑誌「世界」の編集部から原稿の依頼があり、これを引き受けたものの、体調のこともあって、なかなか執筆が進まなかった。しかし、法案を取り巻く上のような状況の変化もあり、力を集中することによって、今日(9日)ようやくまとめあげて、編集部に原稿を送信し、この仕事は一応の落着を見た。
 書きたいことは一杯あったが、私はこの機会に、法案をめぐるこれまでの論議として、法制審議会での質疑と、前国会の衆議院法務委員会での質疑の内容とその特色を、比較しながら分析して見たかった。そこには、共謀罪法案に対する基本的な姿勢、もっといえば「思想」の違いが存在すると感じたからである。前者は、国際的な組織犯罪に対する効果的な対処策として条約を評価し、その国内法化を広く容認しようとするものであるのに対して、後者には、国際協力の必要性を認めつつも、共謀罪の広汎な処罰が市民の権利と自由を脅かすのではないかと懸念し、その「限定化」を図ろうとする姿勢が見られるのである。
 それにしても、法制審議会刑事法部会の結論が、13:1で法案(要綱)に賛成するものであったことは、この審議会がいかに少数意見を反映しにくい構造になっているかを物語っている。しかも、反対の1票は弁護士のようであり、学者委員は全員が賛成しているという事実は、刑法学会の会員全体の意見分布という点からもいささか偏っていないであろうか。
 
by nakayama_kenichi | 2005-10-08 19:12