公務員の政治活動の禁止
2005年 09月 05日
第1は、公務員の政治活動の禁止違反が問題になったこれまでの「判例」は10件足らずあるが、そのすべてが行政的な裁量権のないr機械的労務に従事する非管理職の下級公務員に関するものであって、しかも勤務時間外に行われた「市民」としての行為にかかわるものであったという点である。むしろ、裁量権を持った管理職の高級公務員による地位利用こそが問題とされるべきであると考えられるのに、そのような適用事例は全く見られないのは不思議である。
第2は、そのような判例も、1980年以降、姿を見せなくなって、すでに20年以上も続いていたが、最近再びこの種の政治的な表現活動への規制の動きが表面化してきていることである。2004年3月に、政党機関誌をポストに配布したとして起訴された「堀越事件」がそれであり、この問題が再燃する状況にある。
第3は、国家公務員法と異なって、地方公務員法には、政治活動の禁止規定はあるものの、「罰則」の定めがないという著しい相違があるという点である。それは、国家公務員法の方が異常であって(アメリカでも改正された)、地方公務員法なみに改正されるべきであることを強く示唆している。ところが、最近の日本では、逆に地方公務員法を国家公務員法なみに改正しようとする動きさえ見られるという。何ということであろうか、唖然とせざるを得ない。
この問題については、憲法学者の批判的意見は多くあるが、刑法学者の対応が著しく遅れていることに注意を喚起しておきたい。