再び靖国問題について
2005年 07月 13日
第1は、松平氏が後日、当時の心境を次のように明らかにしている部分である。「(就任を)決心する前、東京裁判を否定しなければ日本の精神復興はできないと思うから、いわゆるA級戦犯の方々も祭るべきだという意見を申し上げた」。つまり、A級戦犯の合祀は、東京裁判を否定しなければ成り立たないという論理的な関係にあることが明確に意識されていたのであり、日本の精神復興とは東京裁判を否定した戦前の思想の復活を意味していたのである。
第2は、A級戦犯の合祀が松平宮司の意思だけで実現したとも言えず、政府がそのレールを敷いた側面もあるとし、合祀名簿の原本となるリストの作成に旧厚生省が関与しており、松平氏も「国会機関による公的決定」を経たという認識を強調していたと指摘されている部分である。A級戦犯合祀の決定は当時の政権中枢によって了解されていたのである。
この記事は、小泉首相が東京裁判を認めながら参拝を続けるという論理の矛盾を明らかにするものであるが、そのほかにも靖国神社に公式参拝を繰り返す数十人の国会議員に対して、改めてA級戦犯の戦争責任についての所見を問いたいところである。アメリカ占領軍が天皇の戦争責任まで問題にしたという事実も決して忘れ去られてはならない。

