いわゆる「社会的入院」の解消問題
2005年 06月 10日
こうした中で、国は精神保健福祉対策本部の中間報告(2003年)で、入院医療中心から地域生活中心へという方針を打ち出し、条件が整えば10年間に7万2千人の地域移行という目標を設定した。これは、きわめてモデストな提案であるにもかかわらず、民間精神病院の団体である「日本精神科病院協会」はこれに敏感な反応を示した。すでに「日精協」の全国集会(2002年11月)は、その声明の中で、7万2千人の社会的入院の解消という提案は国民に精神科病院の現状を誤解させるものであって断じて容認きないと真っ向から批判し、来賓として講演した武見敬三参院議員も、この平均在院日数の短縮の圧力は病床の削減に連動したものであり、官僚による机上の空論にすぎないと断じていたのである。
しかし、その後の日精協の対応は冷静さを取り戻したらしく、仙波恒雄会長によれが、日精協で行ったマスタープラン調査でも、3年以上の長期入院患者のうち条件が整えば退院可能と考えられるものは、約4万6千人で、これに1年以内のものを含めると、7万2千人という数値と大体一致したものになるというのである(ジュリスト増刊、2004.3、210頁)。
しかし、それでもなお、病床数はその国の精神医療の取組や統計の取り方によって異なるので国際比較には注意を要するとして、1970年代の諸外国における脱施設化運動を相対化する傾向が残っている。過去の政策の所産である歴史的な長期在院者群ともいえる日本特有の問題の分析にもっと目を向けるべきであろう。

