中・中山論争について
2005年 06月 03日
中先生は、私が刑法解釈論を勉強する際に、多くの質問に丁寧に答えて下さった貴重な恩人です。とくに、平野・平場両先生の「刑法研究会」で上京した際には、ほとんど毎月、新幹線の中で行きも帰りも質問を続けて時の経つのを忘れる位に楽しかったことを思い出します。先生も、嫌な顔もせずに、ただしビールを飲みながら付き合って下さいました。今頃は苦笑されていることでしょう。
その成果が、後に法律雑誌上で、とくに「故意と主観的違法要素」、「間接正犯の実行の着手」、「不能犯論」などをテーマとする一連の論争として現われました。私は後にこれらを論文集にまとめましたが(刑法の論争問題、1991年、成文堂)、その序文で以下のように書いています。
「中教授は、関西における傑出したドグマティカーとして知られる大先輩であり、これまで長期にわたり多大のご教示を受けてきたが、その胸をお借りしての論争は、学問的な情熱をかき立てるに十分であって、私個人にとっても大変有意義なものであった。ただし、結果的には、双方とも容易に妥協しない「確信犯」であることを確かめ合うような結果になったようであるが・・・」。
その後も中先生の驥尾に付しているつもりですが、先生の学問的情熱は伝えられても、あの和魂漢才と独特のユーモアには脱帽するほかありません。