刑法と教育勅語
2005年 06月 01日
原審は、不法領得の意思(権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従って利用または処分する意思)がないとして、警察犯処罰令2条5号の罪(他人の業務に対する悪戯・妨害ー戦後の軽犯罪法1条31号)に当たるとしたのに対して、検察官は刑法235条(窃盗罪)および233条(業務妨害罪)を適用すべきだとして上告しました。しかし、大審院(戦後の最高裁に当たる)は、原審判決を支持して、窃盗罪の成立を否定したという著名な判例であります(大審院大正4年5月21日判決)。
これは、戦前における「教育勅語」の絶対的な権威を考えますと、大変勇気のある大審院判決であったといえるでしょう。今はもう「教育勅語」を知らない世代が支配的となったと思いますが、私自身の体験からは、今でも鮮やかに思い出す光景があります。それは、文部省から各学校に下賜された「教育勅語」の謄本が、学校の正門わきの「奉安殿」に天皇のご真影とともに安置され、教職員も生徒も登校時と下校時に最敬礼をして通るというのが日課であり、紀元節や天長節や明治節の日には校長先生が恭しく「教育勅語」を読み上げるのを直立不動で拝聴し、暗誦させられたという少年時代の思い出です。「朕思うに、わが皇祖皇宗・・・・・」という文章はもう忘れていましたが、パソコンで検索をし、軍人勅諭とともに、改めてその内容を確かめています。
若い世代の方々にも、一度参照されることをお勧めします。