官と民の関係
2005年 05月 12日
しかし、問題が民営化によって解決されるというのは甘い幻想にすぎないように思われる。たとえば、日本の精神病院は国公立病院がきわめて少なく、大部分が民間の精神病院であって、その点では民営化の模範ともいえるであろうが、実際にはそのために民間の精神病院が多数の長期入院患者をかかえ、貧しい医療体制の温存を余儀なくされているという側面があることはまぎれもない事実である。そこには、国(官)が本来果たすべき役割を「民」に押し付けているという関係があるといえよう。
公共的性格の問題にかかわる「官」と「民」の関係については、いずれの側にも考慮すべき問題点がある。まず「官」の側には、国が果たすべき責任を明確化して、市場主義から相対的に独立した原則を市民のために平等に保障することができるが、その反面として「官僚主義」の弊害から特権を温存したトップダウン方式に毒されるおそれがある。一方、「民」の側には、権威的な統制を回避し得る自由な活動の余地は広がる可能性があるが、その反面として「市場主義」の影響から競争と効率の原理が支配し、自己責任の名のもとに格差が拡大して社会矛盾が増幅するおそれがある。
したがって、いずれの側にも、メリットとデメリットがあることを確認したうえで、民営化が何をもたらすのかということを判断しなければならない。差し当たり、国立大学の法人化後に、研究費の削減や授業料の値上げがなぜ出てくるのかを考えても、それが「市場主義」の影響であって、「官僚主義」の克服に役立つものではないのが残念である。

