心神喪失者等医療観察法の施行について
2005年 05月 10日
ところが、肝心の指定入院医療機関の建設が進まず、施行期限時に受け入れ可能なのは国立の2か所にすぎない状況なので、政府・与党は、所定の病床数(国立8か所、都道府県立病院16か所)が確保できるまでの間、経過措置として措置入院を受け入れている都道府県立病院を厚労相の指定を受けなくても「代用」できる案などを検討していると報じられた(朝日2005年3月27日)。
しかし、このまま「代用」で施行されることになれば、特別病棟で高水準の「手厚い医療」を提供する制度であるというこの法律の謳い文句が泣くことになり、裏切りも甚だしいということになりかねない。施行直前に法律を改正するというのもきわめて異例で強引な手法といわざるを得ないのである。十分な施設が整うまで施行を延期するのが当然というべきであろう。
しかも、施設面の不備だけでなく、この法律には、適用の手続上も、裁判所による入院等の決定の基礎となるべき「鑑定入院」(2か月プラス1か月)中の医療および処遇に関する規定がないために、その間の身柄拘束の根拠は何かという疑問が生じている。これはやや難しい問題であるが、鑑定が終わった後の医療と観察を誰が誰の責任で行い得るのか、同意がなくても行い得るのか、不服の申立ては誰に対して行えるのかといった重大な問題が存在する。したがって、この問題を論議し、必要な規定を補充するまでは、施行を延期するのが、立法者の当然の義
務というべきであろう。

