竜頭蛇尾
2011年 05月 19日
そして、この問題を検討してきた「検察のあり方会議」(座長・千葉元法相)が「提言」をまとめて江田法相に提出しました(3月31日)。しかし、この「検察の再生に向けて」と題する提言は、取調べの録音・録画について「より一層、その範囲を拡大すべきである」との方向を示したのみで、肝心の取調べ全過程の録音・録画の制度化は明言されないまま、新しい検討の場に先送りされることになってしまいました。
江田法相は、取調べに一部の可視化にとどまらず、「全過程」でも試行するよう笠間検事総長に指示し、検事総長も全過程の試行に踏み切ることを明らかにしたといわれています(4月23日朝日新聞)。ところが、同時に現場では根強い反発と抵抗が存在することが公然と語られていますので、法相が検事総長に対して求めたとわれる「1ヶ月以内に体勢を整えて実施し、1年後をめどに有効性や問題点を検証する」という指示が実際に行われるという保障があるとはいえない状態です。
「全過程の録音・録画」の試行が、検察内部で実際に行われるかを注視しなければなりませんが、それが不可能であれば、立法化のために「法制審議会」に検討の場を移すことが考えられますが、ここにも法務・検察の主導権が及んでいる現状のもとでは、文明国の「国際水準」に合わせるという改革もまた、残念ながら竜頭蛇尾に終わってしまうおそれが大きいように思われます。それでは「密室取調べ」が誤判を生むという構造が続くことになります。