臓器移植法の改正案
2005年 04月 26日
最初の案は、脳死を人の死と定め、医師の裁量で脳死判定・死亡宣告ができるという徹底したものであったが、市民団体等からの反対の声が上がり、家族の同意を条件とするところまで修正を加えることになった。
現行法では、家族のみならず本人の同意(ドナーカード)がなければ脳死判定に入れないので、ドナーカードがなくても家族の同意があれば脳死判定と移植が可能となる点で、重大な相違がある。しかし、少なくとも家族の同意がなければ脳死判定をして死亡宣告もできないので、「脳死は人の死である」と認めたことにはならない点で、最初の案とも質的な相違があり、いわば両者の中間案といえよう。
しかし、この修正案では、現行法よりもさらに論理的な矛盾が深まる。それは、脳死状態の人を家族の同意だけで死体と認めることになるからで、これを理論的に正当化することはおそらくできないであろう。
さらに、本人の意思が不明なのに家族が同意を与えるというケースは、家族の心理的負担を考えれば、実際にどれほどあるか必ずしもはっきりせず、効果にも疑問がある。
むしろ、ドナーを増やすにはどうしたらよいかを、もっと視野を広げて考えるべきであろう。
臓器売買には強い抵抗感があり弊害があるとしても、ドナーの意思表示者に何らかの「報償」を与えることなどは考慮してもよいのではないかと思われる。