社会的入院
2011年 02月 02日
日本の精神科病院の病床数は、最高時に36万床まで増えた後も、ほとんど減少せず、2010年4月現在、34万7千床にのぼるといわれ、最近の世界的な脱病院化の流れに反して、国際的にも異常に多い状態が続いています。これは、戦後日本がとってきた精神医療政策によるところが多く、精神病床の9割を占める民間病院への補助金制度で施設拡張が続いたためですが、国の財政負担を抑えるための安易な方策に精神病院側も呼応し利用するという悪循環が支配していたのです。
ようやく2004年になって、国は「入院医療中心から地域生活中心へ」と精神医療政策を転換し、「社会入院」患者7万人の解消を掲げたのですが、これもあまり進まない状態です。
しかし、その中にあって、民間精神病院団体である「日本精神科病院協会」の会長が、現在の国の財政状況から見て、高齢の精神障害者の居住施設を公的に整備する余力がないならば、既存の精神病床の一部を特別養護老人ホームや老健施設、グループホームに転換して、病院施設を居住系施設に改造していくことが現実的な方策ではないだろうかと提言されているのが注目されます(朝日新聞2011年1月27日)。民主党政権の支援が期待されるところです。

