無期刑にも問題
2011年 01月 22日
無期刑に処せられた者は、恩赦などによって刑が消滅しなければ刑期は終わらないのですが、改悛の情があるときは、10年を経過した後、行政官庁の処分によって「仮釈放」される可能性が残されています(刑法28条)。その意味では「終身刑」ではないのです。
ところが、法務省の調査報告によりますと、無期刑に処せられた収容者に対する「仮釈放」の件数が、とくに最近になって、目立って減少しつつあり、無期刑が実際上「終身刑化」しているという実態が明らかになってきています。
たとえば、無期刑に処せられて刑務所に収容中の者は、2000年には1047人であったものが、2009年には1772人にまで増加していますが、その間に仮釈放になった者は、わずか86人で、しかも最近では、年間数人にまで減少した結果、無期受刑者が増加・滞留して、高齢化が進み、在所期間が40-50年に及ぶ者が17人、50-60年に及ぶ者が7人、死亡した者が126人を数えるというのです。また、仮釈放されるまでの在所期間も次第に長くなり、この10年間に、在所期間が20年になるまでに仮釈放された者は1人もいないというのが現状です。
このような状態は、法律の趣旨に反するだけでなく、無期刑を、ある意味では「死刑」よりも残酷な「終身刑」にしてしまうおそれが濃いといわざるを得ません。無期刑の「仮釈放」に関するこのような運用は、死刑を廃止しているヨーロッパの諸国の無期刑よりも厳しいもので、日本はこの分野でも国際水準から著しく立ち遅れていることを自覚しなければなりません。抜本的な改善策が要請されているのです。