死刑廃止に向けた国連の決議案
2011年 01月 19日
折から、国連総会の第3委員会が、2010年11月に、死刑存置国に対して、死刑の使用の制限、死刑相当犯罪の削減、および死刑廃止を目指して死刑執行の一時停止(モラトリアム)を確立することを、そして死刑廃止国に対しては死刑を再導入しないよう求める決議案を、賛成107、反対38、棄権36の賛成多数で可決したと報じられています。この3年間で、賛成が1国増えたのに対して、反対票を投じた国は54から38へと着実に減少している点が注目されます。先進国といわれる国がほとんど死刑廃止国となっている中で、決議案に反対票を投じたのは、アメリカと日本だけという有様です(アメリカでも12州は廃止)。韓国は死刑停止国ですが、中国は未だに死刑存置大国です。
日本政府(法務省)は、世論の圧倒的多数の支持を得ていることを理由に、強硬な存置論を主張し続けていますが、2008年の国連の人権規約委員会からは、世論にかかわらず死刑廃止を前向きに検討し、死刑廃止がのぞましいことを国民に知らせるよう勧告されたことを完全に無視しています。もっとオープンに国民に対して国際的な動向を示す情報を十分に開示した上で、偏見のない中立的な方法で世論調査を慎重に試みれば、事態は変わってくるものと思われます。
なお、松宮教授が指摘されるように、死刑存置国の場合には、死刑廃止国に逃亡した重大な犯罪人の引渡しを拒否されて、処罰できなくなるという不都合もあります。