第三者機関の重要性
2010年 08月 29日
たとえば、再審まで行って、ようやく誤判・冤罪事件であることが判明した「足利事件」について、警察庁と検察庁が内部調査をし、とくに捜査活動について一定の反省と今後の再発防止策を含む報告書を出しましたが、これらは実施主体である警察庁や検察庁の内部で行われたもので、外部の批判にさらされていないという点に、本質的な限界があります。肝心の再発防止策についても、ポリグラフ検査の精度の向上や上級庁による指導の充実・強化を唱えるのみで、虚偽自白を誘発する危険のある「取調べの全面可視化」への提言は全く見られません。
この点で、参考になるのが、最近の法律雑誌で紹介されている『イギリスの刑事事件再審委員会』の制度です(福島至「第三者機関の意義」法学セミナー2010年9月号所収)。この委員会は、1997年に「独立した公的機関」として設けられ、誤判救済のための業務として、誤判の被害を受けたと考える人の申立てを受けて、確定有罪判決を再審理のため控訴院に付託する権限を有し、現に毎年1000件弱の申立てがあり、その4%ほどが控訴院の審理に付され、約70%が有罪判決を破棄されたといわれています。
福島教授は、イギリスの経験を学び、日本でも、再審請求援助のための公的な「第三者機関」を設ける必要があるといわれていますが、その真意が千葉法務大臣に伝わる保障は、残念ながら乏しいといわざるを得ません。日本ではまだ、制度や法案の作成過程やその事後評価を含めて、「官僚主導型」が定着し、外部からの批判的意見に極めて警戒的な体質が浸み込んでおり、これに風穴を開けることは容易ではなさそうです。千葉法相が構想する「死刑制度に関する勉強会」も、法務行政から独立した「第三者機関」とはとてもなり得ないように思われるのです。