小児渡航移植
2010年 08月 26日
これまでのの臓器移植法では、15歳未満の小児については、本人の提供意思が要件となっていましたので、臓器の提供による移植は不可能だったのですが、2009年の改正臓器移植法では、家族の意思だけで可能になりましたので、国内における小児の臓器移植も法的には可能になりました。
これまでは、とくに心臓や肺の移植を必要とする小児患者は、外国に渡航して移植の機会を求めるという方法が常態化し、そして現に多くの実例が報道されてきました。それは、一方では、子供の命を救う美談としても語られましたが、他方では、臓器売買につながる、渡航国内の移植の機会をうばう、渡航費用の点で富裕層に限られるといった批判も受けてきたのです。
そして、現に、2008年には、国際移植学会が「臓器売買や移植ツーリズムの禁止」を打ち出しましたので、渡航移植は自粛を迫られる状況にあります。では、小児にも国内移植の可能性が早急に開ける可能性があるかというと、ドナーとなる児童の虐待を見抜けるか、同意する親は十分に納得できるか、1ヶ月以上の「長期脳死」の判定は可能かといった困難な問題があり、決して楽観できません。
それでは、海外渡航という選択肢は今後も残ることになるというジレンマに立たされます。しかし、これを認めざるを得ないとしても、これまでのように、受け入れ国の裁量や善意に一方的に甘えることなく、渡航移植の弊害を克服するため、受け入れ国の国民の目に見える形で利益を還元する(相手国の移植費用に使うなど)システムのあり方を考えていくべきでしょう。

