見えぬドナー意思
2010年 08月 21日
この1例目と2例目には、「ドナーの提供意思」の取扱いについて、重要な相違があることに注意しなければなりません。最近の改正法によって、本人の意思が不明な場合でも家族が承諾すれば脳死移植が可能となりましたが、実際には「本人の意思の尊重」が前提となっていますので、今回の2例目でも、本人による拒否の意思がなかったこと確認したといわれており、将来は運転免許証などに「拒否の意思」の記載欄を設けることも考えられているとのことです。しかし、これは「提供意思カード」以上に実現困難でしょう。
むしろ問題は、本人の意思という判断材料なしで、家族が決断を迫られるという場面が現実に生じたという事実です。2例目では、脳死判定の後、主治医が臓器移植の制度について説明し、家族は同居の両親を含む家族の総意で提供の決断をしたとのことです。
しかし、そこには問題があり、臓器移植の「透明性」を確保するためには、「改正法の下では、脳死状態になったら、家族に対し、臓器提供の選択肢があることが、医師から示されることになっているが、どの時点でどんなふうに家族に告げられたのか」を明らにする必要があるからです(朝日新聞8月11日社説)。1例目でも、説明の時期や内容の詳細は家族の意向で公表されなかったのですが、2例目でもブラックボックスになるおそれがあります。ドナーの意思だけでなく、家族の意思も見えなくなっていくおそれを警戒しなければならないでしょう。

