スペイン方式
2010年 08月 06日
4回にわたる取材報告によりますと、スペインが世界一を誇るのはサッカーだけではなく、臓器提供者数が、脳死と心臓死を合わせて、人口100万人当たりで世界で最も多く、1992年以降、世界のトップを走り続けており、08年には34人に達したといわれます。年に1600人が臓器を提供し、生存率も高いというのは、驚くべき水準だといえるでしょう。
問題は、その世界一の鍵がどこにあるのかという点ですが、それは「医師を中心とした態勢にある」といわれ、1989年に移植医療の司令塔である全国移植組織が創設されて以来、提供者が出ると、提供先を決め、輸送手段を手配し、提供病院の移植コーディネーターの医師には、提供者になる可能性のある患者の把握と家族への確認方法が徹底的に教育されたといわれています。いかに早く脳死患者を把握して、家族に説明するかが決定的だというのです。また、1979年の移植法も、脳死を人の死とし、本人が拒否の意思表示をしていない限り、家族の意向にも関係なく臓器を摘出できると定めており、それ以降、脳死者からの提供が本格化したといわれています。
しかし、この報告の中でも、臓器提供者の家族の悩みに光を当ててほしいという影の部分が紹介されているほか、日本でも、移植が浸透してくれば治療の継続という選択肢が危うくなるという不安も聞かれることに注目すべきでしょう(8月1日朝日)。
スペイン方式が世界に広がるとき、「移植医療が終末期医療の充実を前提とする」という大原則が揺らぐのでないかという危惧と矛盾がどうしても残るように思われてなりません。

