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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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百勿訓釈義

 若狭の賢者といわれた乾長昭氏が、大正から昭和の時期に書き残した多くの著書・論文を含む古い資料は、今でも、当時の門弟の子孫によって大切に保存されていますが、そのうち、『百勿訓』と題する著書(昭和10年3月、大阪活版所、非売品)の内容の一端を紹介します。
 はしがきの部分には、漢文で、余はすでに老いて命がまさに尽きようとしているので、この「訓」をもってわが子や孫や門弟に示し、修身処世に過ちなきことを願うとあり、昭和8年月、第34世長昭と記され、源長昭の大きな印鑑が捺されています。
 それは、「君恩を忘るること勿れ」からはじまって、「修省して疚(やま)しきこと勿れ」まで、実に100個の「勿れ」が漢文で書かれ、1つ1つ注釈がつけられています。出典も注も全く付されていませんので、全部を著者自身が創作したものと思われます。
 戦前の昭和8年の時代を考えますと、忠君愛国の精神と日本の淳風美俗論が中心におかれ、孔子・孟子の儒教の教えが基本にあることは明らかです。それは、仁・義・禮・智・信(5常の徳)を、父子・君臣・夫婦・長幼・朋友(5倫)の関係に及ぼすという趣旨のものですが、百勿のなかから、参考までにそのごく一部の項目をあげておきます。
 「知らざるを言うこと勿れ」(浅学にして自ら知らざることを、物知り顔に言うのは、人を誤り又自己を欺くものである。言は慎みていやしくもすべきはない)。
 「人に問ふを愧(は)つること勿れ」(己のしらざることは之を問ひてこそ、己の智を増し一生の恥を免れ、問ふを愧(はつ)かしと思ひて已むのは一生の恥をのこすのである)。
 「恭謙にして傲なること勿れ」(人に対して恭しく禮を失はず、謙遜を旨として傲(おご)らむは、人の美徳である)。
 「学ひて世に後(おく)るること勿れ」(時代の進運は1日も停止せず、常に修養を怠らず之に伴ふて行かねば、世に用なき過去の人となるべし)。以下略。
by nakayama_kenichi | 2010-08-04 09:33