非核三原則の危機
2010年 07月 29日
「非核三原則」とは、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という意味で、1967年に当時の佐藤栄作首相が、国会答弁の中で、わが国の『国是』として明言して以来、公式に承認されてきたものです。ただし、「持ち込ませず」の点については、かつてから在日米軍基地へのアメリカの核登載空母の寄航をめぐって問題があり、最近になって「密約」のあったことが明らかになったばかりです。
報告書は、この「密約」を非難するどころか、むしろ非核三原則の1つが骨抜きになっている実態を容認し、現実の政策をこれに合わせるべきだとするもので、武器禁輸政策の見直しを含めて、対米依存の安全保障政策を転換し、日本の自衛隊が今よりも積極的に関わることを容認する「日米同盟」強化案を積極的に打ち出したもので、「改憲論」につながるものです。
政府が直ちにこの提言を受け入れる可能性は小さいといわれていますが、不思議なのはマスコミの対応です。この問題を大きく報じた朝日新聞は、「世界で唯一の被爆国の『国是』を変えようとする動きには、世論の強い反発は必死だ」といいながら、批判や反発の意見は全く掲載されず、わずかに当日夕刊の「素粒子」欄に、「首相の私的諮問機関が『持ちこませず』原則の見直しを提言。非核の願いはどこ吹く風のよう」とあるのみ。翌日の朝刊以降は、「社説」を含めて、関連記事は全く見当たりません。「世論の強い反発」を敏感に代弁し、8月6日を前に、「核を落とした国の『核の傘』に頼る被爆国」の矛盾をこそ、追及し続けてほしいものです。

