ラザロ徴候
2010年 06月 30日
それは、具体的には、脳死判定の最中や前後に、ベッドに横たわった脳死者の両手が、直接触れるなどの刺激を与えていないのに突然持ち上がり、胸の前で合わさってまるで祈るようなしぐさをするというものです。つまり、それは、いわゆる「長期脳死」の典型的な一例をあらわすものとして、注目されているのです。
ご承知のように、2009年7月の国会で、1997年の「臓器移植法」の根本原則を変えてしまうような改正案があわただしく通過し、2010年7月から施行されることになっています。
このブログでも取り上げましたが、本人の同意がなくても遺族の同意があれば「脳死体」からの臓器移植を可能にするという改正案には、理論的にも実務的も多くの疑問が提起されたままでの施行となります。
遺族の代諾や親族優先規定にも原則的な問題がありますが、とくに子供の脳死判定の困難さが賛成論者からも指摘されていました。そして、それが子供の「長期脳死」の問題として浮かび上がってきたのです。脳死になっても、30日以上も心臓が止まらず、ときには1年以上も鼓動が続き、子供の場合は身長も伸びるという事例が世界各地で報告されるようになり、テレビ放映もなされたようです。「ラザロ徴候」もその一つです。
このような状況の中で、脳死を人の死として臓器移植をしてよいのかという疑問が出てくるのは当然でしょう。脳死体に麻酔剤や筋肉弛緩剤を投与してからメスを入れるという現実にも違和感があります。改正法が慢性的な臓器不足を解消するという保障もありません。むしろ脳死者からの臓器移植の是非を根本的に再検討すべき時に来ているというべきでしょう。