韓国の国民参与裁判制度
2010年 06月 07日
詳しい書評などは、また後に執筆したいと考えていますが、ここでは、とりあえず一読した際の印象のいくつかをあげて、一般の関心を喚起しておきたいと思います。
1.韓国の「国民参与裁判」は、わが国の「裁判員裁判」に対応するもので、一般市民が裁判に参加する制度として、多くの類似性をもつだけでなく、韓国の制度が2008年1月1日から、日本の制度が2009年5月21日から施行されるなど、ほとんど同時期に発足している点でも、互いの影響が予測されることが著者の問題意識の念頭におかれています。
2.韓国の「国民参与裁判制度」の内容が、その成立の経緯からはじまって、制度の構成と手続の進め方に及び、さらに2009年6月までの全事件(66件)の裁判結果の内容の一覧表や付属資料等も付して、実に丹念にフォローされています。新しい制度に対する識者の意見のほか、市民のアンケート調査の結果にも興味深いものがあります。
3.韓国の「国民参与裁判制度」が、わが国の「裁判員制度」と異なる重要な点として、韓国の制度が、裁判員だけの「陪審制」であって、裁判所には法的な拘束力を持たないこと、この制度が被告人の「選択制」となっているので、まだ参与裁判の実施例が少ないこと、参与裁判では通常の裁判と比べて「無罪率」が高いこと、などがあげられています。
4.著者は、日韓の制度ともに一長一短があって、互いに示唆に富むと評されていますが、私見としては、その前提として、韓国では「死刑」が凍結状態にあること、警察・検察による事件の取調べが全面的に「可視化」(録音・録画)され、公判準備手続も「公開」されているといった点を、まず日本側が学んでほしいと思いました。